コインロッカー・ベイビーズ
コインロッカー・ベイビーズ
村上龍(著)1984
村上龍の長編小説。
村上龍さんは、好きな作家さんの一人です。
生まれてすぐ、コインロッカーに投げ込まれた2人の話。
この本の出版は1984年。
わたしが生まれた2年後に出来た作品とは思えない。
20年以上経っても、現代社会に問いかけるものがある作品。
ただ、最近の文章の方が、より明確な書き方だなぁと。
つまり、わたしにとっては、少しわかり難い表現や、文面が多く四苦八苦しました。
以下は、小説の内容を含む感想です。
生きることは、死に向かうことだと再認識させられました。
コインロッカーに捨てられたキクとハシ。
対照的な静と動の性格を持つ2人が、
幼少期に受けた精神治療で聞いた『音』を求める姿が何とも痛々しい。
コインロッカーで生まれた二人は、施設で一緒に育ち、離島の夫婦に二人とも引き取られる。
高校生になったキクは、棒高跳びで、全国に名を知らしめる。キクの絶頂期。
このとき、ハシは内向的な感情を更に高める。そして、姿をくらます。
消息不明になったハシを探しに、義母和代と上京したキク。
和代が、キクに、『幸せだったか』と聞いたシーンは、やたら泣けた。
その後、和代が命を落とす。
『どんな死に方をするのだろう』
と和代は生前に呟いていたが、終わりは実にあっけなく、唐突に来た。
わたしはこの小説の中で唯一義母和代に感情移入できた。
なので、彼女がなくなるシーンは、悲しかった。
子供のいなかった彼女が、ハシとキクをどちらも同等に扱い育てあげた。
二人がいたことで、母親になることが出来たんだと思う。
ハシ、キク、アネモネ。
共に肩入れすることなく最後まで読みきったけど、
主人公格に感情移入しなくても、面白いと思える作品。
途中に出てくる、殺人や、性描写は、村上龍氏ならではの表現だと思う。
例えばフリーターとか、ニートとか、社会は柔らかい言葉に表現をしていくけど、
この作品は、汚いものは汚く表現している。
それが苦痛な人には、耐えられないかもしれない。
自問自答と自閉と破壊をテーマに、今ある世界を壊していくエンディング。
二人は同じ場所にはいないけど、キクは直線的に、ハシは婉曲的に破壊に向かう。
最後には、
自ら破壊する側になったハシ
破壊を誘導したキク
逆を想像していたので、いい意味で裏切られた。
(逆を想像してしまう時点で、想像力が足りないのかも?)
そしてなお作者から、現状を壊せという強いメッセージが届けられた気がした。
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